人事が経営の視点を持つために(HRコンサルタント 橋本祐造インタビュー)

  • 2019年5月21日
  • 2019年5月29日
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インタビューリレー第一弾は日テレHRコンサルタントの一人である橋本祐造さんに話を伺いました。橋本さんが日テレHRに参画した理由から、新しい採用の形である「解け合う」採用、そしてこれからの人と組織の関係や人事担当者の未来の姿にまで話は展開していきました。

 

日テレという「伝統的組織」が、「最先端」である理由

――まず、橋本さんが日テレHRに参画したきっかけからお聞かせください。

橋本:日テレの組織のあり方が、私のテレビ局のイメージを覆してくれました。日テレは少数精鋭の正社員と、外部のパートナーの方々で番組制作をしていますよね。私が在籍していたテレビ局は、当時はすべて正社員だけで動かし、外部は基本的には入れないという方針でした。だから、日テレの「少人数の正社員と外部パートナーで高視聴率をつくり出す」という組織の仕組み自体に興味を持ったのです。しかもこの組織のあり方は、時代の最先端を走る働き方でもあります。

 

――ここ数年でティール組織やホラクラシー経営といった「人材を管理しない」という組織のあり方が注目されています。日テレの組織のあり方は、「管理しない」ことが注目されるずっと前から実践していたと言えそうですね

橋本:私もまったく同じことを思いました。日テレHRは組織だけでなく、個人の働き方の最新の流れも組んでいるはずです。今は複業や副業に興味を持つ方が増えていますよね。私自身も複数社で活動していますし、そういった外部の人間を活用する流れは確実にできています。だから日テレのHR事業を推進することで、新しい働き方と外部人材の活用の両方を一歩先に進められるのではないかと思っています。

 

――先日、経団連の会長やトヨタ自動車の社長が「終身雇用を維持するのは難しくなっている」と発言しました。こういった会社と個人の関係が希薄になっている中で、これから会社と個人の関係はどう変化していくのでしょうか?

橋本:雇用という契約関係から、人と人のつながりになっていくでしょうね。実際の問題として、労働人口が毎年50万人ずつ減っています。50万人という数字は一年間のセンター試験を受ける数と一緒なんですよね。それくらいのインパクトがあります。5年経つと単純に250万人が減る社会はどういう社会かというと、会社が採用したいと思ってもできない社会ということです。そもそも人がいないわけですから。だから私は「会社は溶け出しコミュニティーになる」と考えています。会社は概念や価値観でつながったゆるい連合体になり、そこに仕事という名前のプロジェクトがやってくるんです。これが近い未来の会社と人の関係性です。

 

――外部のパートナーと良好な関係を築いて結果を出す日テレの考え方とも、一致するものがあるように思います。

橋本:私もそう思います。だから日テレHRに共感したんでしょうね。ワークシェアリングという言葉があります。それが人材のシェアリングに変わるんですよ。例えばベンチャーが3社あったら、3社とも採用できなくなる時代が確実に訪れます。でも3社で1人を採用することは可能です。その時々によって、一人の人が一社にずっと留まる必要があるかと問われれば、そんなことはないですよね。ある時はA社、またある時はB社で活躍すれば良いのです。

 

「見極める」から「解け合う」採用へのシフト

橋本:現在の私の仕事は、オーダーを受けて組織や採用のコンサルティングがメインです。お客様の課題として多いものは「人材が定着しない」であったり「採用できない」というものですね。もしくは人事系の新しいプロダクトをつくりたいという思いがある会社からは、事業企画や事業開発のところからアドバイザリーとして声をかけたいただくこともあります。

 

――コンサルティングというと、どういった内容でしょうか?

橋本:私は30人規模の会社の採用や教育支援をすることが多いですね。その場合の課題のほとんどは、人事担当者の能力や性格に帰結します経験上ではありますが、10社あったら5~6社は人事担当者の方自身の育成をすることになります。

――人事担当者、採用担当者の方も変わる必要があるのですね。

橋本:「人を見極めてやろう」という発想から「向き合って、寄り添って、解け合う」というあり方に変わる必要があるのです。このマインドがない人がいくら採用活動を改善しようとしても、内定受諾率が下がってしまいます。場合によっては、その人がトリガーとなって内定辞退やそもそもの選考辞退を引き起こしてしまうこともあります。採用や人材ビジネスに携わっていると「人ともっと向き合いたいです」という言葉がよく聞こえてきますが、実はそれでは不十分です。

 

――次の段階があるのですね。

橋本:「向き合う」だけだと他人同士で留まってしまっているのです。「寄り添う」と言われても、他人に寄り添われても不自然ですよね。だから「解け合う」がゴールです。言い換えれば、目の前の相手を自分に憑依させるんです。そうすると「この人の人生を私が送っているとして、ここに今もし自分が座っているとしたら、どんな景色が見えて、どんな感情を持ち、例えば、どんな匂いを感じ、どんな不安を抱いているのか」を感じられるようになります。同じ人生観、価値観で物事を考えられるようになっている状態ですね。この状態になれば「次の人生の選択肢はどうすれば良いのだろうか」ということが一緒に考えられますし、そこまでいければ面接でも相手は必ず心を開いてくれます。

 

――「解け合う」というと、頭だけではなく身体全体を使うような感覚ですね。

橋本:そうなんですよね。疑似体験はそれまでに何度もしたことはありましたが、それを技術としても、身体全体でも分かるようになるまでは10年くらいはかかっていますね。体得してからは内定承諾率が9割を下回ったったことはないです。

 

「待つ採用」から営業的な「攻めの採用」へのシフト

――「解け合う」というあり方の話がありましたが、スキルでいうとどういったものが採用の場面では有効だとお考えですか?

橋本:一つは営業の視点ですね。私の社会人最初のキャリアは営業でした。尊敬している父親がたまたま営業の仕事をしていたので、営業職に憧れを持っていたのです。組織の最前線に立って、世の中や会社、お金の流れや人の気持ちをまずは理解したいと考えていました。

 

――営業と採用は一見すると遠い仕事に見えますが、活かせる点があったのでしょうか?

橋本:私は営業を経験した27歳の時に、GMOインターネットで人事職に就きました。そこで気づいたのは「採用担当者は営業的な動きをしていない」ということです。つまり、待ちの姿勢で採用をしているんです。だから私は反対にプッシュ型の営業を採用に取り入れようと考えて、人事になって一番初めにした仕事をテレアポにしました。一日150件は電話しましたよ(笑)。人材ビジネスの会社にかけ続けました。GMOインターネットで採用を担当していた6年間で、450社くらいの方とお会いさせていただきました。

 

――あまり聞いたことのない数字です。人材会社の見極めも大変そうですね。

橋本:そこも「見極める」という気持ちでは向き合っていませんでした。私のヴィジョンや価値観と会社の方向性を共有して、最初に宣言するんです。「私はあなたのことを業者だとは一切思わない。パートナーだと思っています。だから、何かおもしろいことを一緒にやりませんか?」というスタンスを示していました。そうすると「橋本さんのために何とかしたい」とパートナーのスタンスを示し返してくださる企業が出てきたのです。この方法が功を奏して、これまで関わってきた会社のほぼ全てで、最低でも応募者の数は倍にしているんですよ。ある企業では月間の応募者が80名くらいでしたが、今では600名ほどの応募をいただけるように変わっています。

 

――プッシュ型の営業で周りを巻き込んでいくことで、一人ではできないことも実現していったのですね。

橋本:今振り返ってみても、私の基本にあるのは営業です。営業は最初にリサーチをして、ターゲットを決めますよね。そしてアプローチをして、アポイントメントを取って、ヒアリングをします。ヒアリングを受けて課題を解決する提案のプレゼンテーションをします。その後はクロージングをします。そして商品とサービスを提供します。この一連の営業の流れはそのまま採用に応用できるのです。採用の流れを簡略化すると「誰に対してアプローチしたいですか?どんな文章でアプローチしたいですか?では面接でこのことをヒアリングしましょう。弊社はこういった会社なので入社しませんか?では、入社日はいつにしましょう?」という流れですよね。営業のプッシュ型のアプローチは、待ちの姿勢が多い採用環境の中では大きな武器になり得ます。

人事の次の形である「CHRO(最高人材リソース責任者)」とは何か?

橋本:営業の視点が採用に役に立つという話をしましたが、もう一つ人事が知っておくべきものとして、経営の視点があります。

 

――橋本さんはクライアントにも経営者の方がいらっしゃいますが、そういった立場から人事と経営の関係はどういったものであるべきとお考えでしょうか?

橋本:まさに今は、その人事と経営の領域をメインミッションとして活動しています。関わっている企業にはCHROという最高人材リソース責任者を設置するように提言しています。CHROの役割はCEOの人が本来すべき仕事に集中させることです。そのためにはCEOの役割を理解する必要があります。シンプルなんですよ。CEOの仕事は、企業を継続的に運営させるために最低限の売上と利益を確保し、資金調達をして、キャッシュの部分で問題のない形を作り、未来の発展に向けての事業戦略を練り、新規のビジネスをつくっていくことです。では「なぜ経営者が人と組織のことを推進しようとすると、壁にぶつかるのか」が次の問題です。それはやはり、売上と利益を先行させる必要があるからです。もちろんCEOも人と組織の重要性は理解しています。でも割合でいうと6対4くらいで利益や売上を優先する決断をせざるを得ない場合があるのです。

 

――CEOとCHROは5対5の対等な関係ということではないんですね。このCHROになるにはどういった経験が必要になるのでしょうか?

橋本:数字に対する意識ですね。例えば「人が辞めてしまって困っています。定着させないといけないと思うんですよ」という声が私の元によく届きます。そこで「どうしてですか?」と聞くと、いろいろな答えがありますが集約すると「だって人は大事ですよね」に行き着きます。経営の目線からすると、この答えには疑問しかないんです。経営者としては売上と利益を上げることが最優先で、そこに対して「なぜ定着率を上げないといけないのか」と日頃から考えています。経営者は人の定着という組織課題のもう一つ上に売上や利益という経営課題を見据えているんですね。これが数字に対する意識の一例です。

 

――ひとつの例である「人の定着」は、経営の目線で考えると目的ではなく手段になるのですね。

橋本:他にも戦略の目線で人事領域の課題を語る経験も必要になります。例えば今の日本社会の状況といったマクロの視点を持ちつつ、自社は何ができるかというミクロの視点をかけ合わせたら「3年後の変化のために、今はこういった採用をしておきましょう」という発想ができるようになります。そのために必要なことは「職種の越境」です。

 

――橋本さんのキャリアのように、営業出身者が採用に異動するといったものでしょうか?

橋本:そうです。営業だけでなくマーケッター、エンジニア、事業企画、カスタマーサポートから人事もありますよね。もちろん、人事の人が他の職種を体験してみることも良い経験になります。私がおすすめしたいのは複業です。外を見れば案件はたくさんあります。複業を経験してみると「自分が今まで経験してきたことが市場でいくらで売れるのか」が肌感覚で掴めるようになります。びっくりするくらい稼げない可能性だってあります。でも、そうして複業で自社の外の仕事をしていたら、どうしたら市場価値を上げられるのか考えますよね。その経験の中で経営者マインドは培われていくのです。

 

――橋本さんはCHROを提唱しながらも、経営視点を優先されているように見えます。

橋本:私は55対45で絶対に経営者の方を向くと決めています。現場を大事にするあまりに経営者の決断を理解できないと、会社の継続性がなくなってしまうこともあります。ただ、その代わり「魂入れて意思決定してください」とCEOの方にはお伝えしています。そこは勝負ですよね。「あなたが意思決定するなら、私も決断します」と申し上げています。

 

――その考えはどこから生まれたのでしょうか?

橋本:背景にはGMOインターネットに入社する際に、取締役の方に教えていただいたことがあります。面接で問われました。内容は「もし仮に橋本さんが採用し、手塩にかけて育てた人がいるとします。でも、会社が存続するためには、その人は会社を離れる必要があります。その時、橋本さんは本人に今すぐに伝えられますか?」です。私は即答で「伝えるべきだ」と思ったのです。そこだけは紙一重で譲れません。最後は経営の視点が人事の視点を数%でも上回る。そうじゃないと会社は動かないですよね。経営と人事の関係を疑似体験させていただいた瞬間でした。

 

「接点に命を賭ける」と自分と会社のブランドになる

橋本:でも、私は今でこそ人前で話をしたり、コンサルティングなんてさせていただいていますけど、学生時代はほとんど学校にも行かないダメな学生でした。実は大学受験では「1日22時間30分勉強したら合格する」という仮説を立ててがむしゃらに勉強していましたね。それで早稲田の試験に合格したことは良かったのですが、そんな無茶な勉強の仕方をしたことが原因で対人恐怖症になってしまいました。人と話そうとすると動悸が止まらない状態です。

 

――今の堂々とお話される様子からは全く想像がつきません。

橋本:まずは対人恐怖症を克服する必要があったので、ディズニーランドのアルバイトを始めましたね。この4年間で私は変わったと言い切れます。あそこは「キャストとして演じてください」という指導をします。普段だったら、外国人の方や知らない人には絶対に声をかけない性格でしたけど、キャストでいる時は「May I help you?」など自分から話しかけに行きます。最終的にはディズニーランドに週5日いるようになりました(笑)。

 

――もう社員と変わらないですね!

橋本:ディズニーランドにいた4年間を振り返った時に「人はこれだけ変われるんだ」ということに気づいたのです。「人は変われる」ということを自分が身をもって体験することで、人は無限の可能性を秘めていることが分かりました。それをさらに考えていくと、人が集まってできるのが組織ですよね。無限の可能性を秘めている人が集まってできるのが組織であれば、組織も無限の可能性を持っていると考えたのです。だから私は「人が最大限の力を発揮することができる組織づくり」を一生をかけて追求したい。これが私の働く意義であり、使命でもあるのです。これから日テレHRのコンサルタントとしてお会いする方は、会社のミッションの他にご自身の使命もお持ちのはずですよね。そういった方々と「人の無限の可能性を発揮させる組織づくり」をしていければと思います。

 

――橋本さんのお話を聞いていると「自分の役割は何か」という根本的な問いを自然と考えるようになります。

橋本:最後に、私が大好きな言葉についてお話させていただきますね。それは「接点に命を賭けろ」というものです。例えば自分にとっては何十回目の面接であっても、相手にとっては一回目の接点かもしれません。そんな初めて、かつもしかしたら最初で最後かもしれない大切な接点に対して「もう何十回目だから適当でいいかな」と思っていては、相手に失礼ですよね。反対に接点に命を賭けていくと「今日この人に出会えて良かった」、「この人と同じ時間を過ごせて良かった」と思ってもらえるようになります。だから、接点に命を賭けていると自分自身も組織も、会社全体もブランドになります。電話一本、一つのメール、Slackなどのチャットで送る一言も接点です。接点の積み重ねが人や組織のブランドになっていくのです。

 

取材・執筆:佐野創太

 

 

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