【採用人事のトレンド】経団連、“就活ルール”を廃止します!!

  • 2018年10月12日
  • 2019年5月30日
  • その他

ここ最近、人事担当者の間で話題となっていた“就活ルール”廃止問題に結論が出ました。

経団連の中西宏明会長(日立製作所の取締役会長兼代表執行役)が、このルールを廃止すると正式に発表したのです。

この、従来より経団連が策定してきた“就活ルール”(企業の採用活動の解禁時期などを定めた就職活動の日程等の指針)の廃止に関しては、ここ数日来にわたって一般の報道でも多数取り上げられており、広く世間の人々が関心を寄せる重大ニュースとなっています‥‥。

経団連“就活ルール”の廃止決定

中西会長は、今月(10月)9日の定例記者会見で就職活動の時期を決める“就活ルール”に関して「(“就活ルール”は)経団連が策定していくことではなく、政府の方でもいろいろと問題提起を受け止めていろんな議論をしていく方向が出ている。未来投資会議がその場になっていく」、そして「(今後は)採用活動に関する指針を経団連としては策定しない」と述べ、かねてより経団連が主導して決めてきた“就活ルール”を廃止することを正式に表明したのです。

この“就活ルール”には拘束力がない為に、ルールを逸脱して選考活動を進める企業も多く、従来よりその形骸化が問題視されてきました。

また中西会長は、「(学生の就職活動は)大学教育の問題であるのと同時に、企業の姿勢も大変課題がある」と指摘しました。

こうした経団連の方針を受けて、2021年春入社以降の学生を対象とするルールは政府が主導して作る形に変更される見通しとなり、政府と経団連、そして大学等の教育機関が合同で協議会を開き、今後にむけた検討を始めるとのことです。

尚、現行のルールは経団連が「採用選考に関する指針」として定めており、2020年春入社の学生までを対象とし、採用面接を大学4年生の6月1日に解禁する日程を示しています。但し、混乱を避ける為に新ルールの対象となる2021年春入社の学生にも、大学3年生の3月1日に説明会を解禁し大学4年生の6月1日に面接を始める現行の日程が維持されるとみられています。

但し、どの様な着地点に至るかはまだ不明ながら、今回発表されたルールの変更に関しては経団連にとっては既定路線だったと云われています。今春、中西会長の前任者である榊原定征氏(東レ相談役)がこの問題に触れて、「2021年度以降入社対象については、引き続き検討を行ない、秋ぐらいまでには一つの方向性を出したい。良い形を模索していきたい」と発言していました。3月頃には日経新聞などの報道機関も頻繁にこの経団連の“就活ルール”の見直し問題を報じており、最近になって突然の様に“就活ルール”を見直し、廃止に至ったのではない様です。

 

“就活ルール”廃止に関する他団体や政府の見解

日本私立大学団体連合会は、「現行のスケジュールを堅持すべき」との立場を示しており、大学の現場からは、「とにかく、学生たちは混乱しています。やはり一番大事なのは学生たちの声であり、学生たちの立場に立って、彼らの考えを理解した上で、早急にルールを決めて頂きたいと思います」との切実な声があがっていますが、一方で、経済同友会の小林喜光代表幹事(三菱ケミカルホールディングス取締役社長、三菱化学取締役会長)からは「一石を投じたことを非常に前向きに評価したい」との発言がありました。

先月(9月)19日には日本商工会議所の三村明夫会頭(新日鐵住金社友名誉会長)が記者会見の場で、経団連の中西宏明会長が“就活ルール”を廃止する可能性に言及したことに関して「なにもルールがないと就職活動は際限なく早まってしまう。きちんと落ち着いて勉強した学生を社会に出して企業に取り入れることが必要だ」と話し、中小企業の採用活動に混乱が生じうることへの懸念を表明、更に誰が主導すべきかを問われた際には「(それは)経団連であるべきだ」と述べました。

京都商工会議所の立石義雄会頭も、先月(9月)25日の定例記者会見で“就活ルール”について「撤廃すれば、中小企業の人材確保がより厳しくなるのではないか」と述べ、中小企業には一定のルールが必要との考えを示しました。またルールが形骸化している現状については「中小企業からも、学生に選ばれるようインターンなどを通じて自社の強みや魅力を積極的に発信していくことを対策として考えていかなければいけない」と語りました。

一方、全国銀行協会の藤原弘治会長(みずほ銀行頭取)は、先月(9月)13日の定例会見で、経団連の中西宏明会長が“就活ルール”の廃止に言及したことに関連して「個人的見解だが、時代にふさわしいあり方の議論は時宜を得ている」と述べ、「大企業のみならず、中堅中小や何より学生に配慮したものになる議論を期待したい」と話しました。

またビジネスの国際化などを背景として通年採用を実施する企業が増えていることから、かつての“就活ルール”策定時とは採用環境が変化しているとの認識を示し、「新たな採用のあり方を議論することが大切だ」とも述べていました。

有力閣僚のひとりである世耕経済産業大臣は、この“就活ルール”廃止発表を受けて「当然こういった日程の取り決めの議論も必要だと思うが、それに加えて中長期的な視点からしっかりと議論していくことも重要」だと語り、新卒一括採用の見直しや中途採用の更なる拡大を図り、従来からの日本型の雇用慣行に関してもより掘り下げて議論を行うべきだと主述べました。一方で柴山文部科学大臣は、「学生の不安解消のため、早期に結論を得る必要がある」としました。

 

採用側企業の考え

“就活ルール”が「必要」は55%超

日本経済新聞が今年6月に主要企業約90社に調査したところでは、“就活ルール”が「必要」と答えた企業が回答企業の過半数を占めていたと云います。但し、既に新卒の通年採用を実施済み、もしくは検討している企業が半数近くあり、一定の“就活ルール”のもとでフレキシブルで柔軟な採用環境の構築が求められているとも感じられます。

経団連が定めていた今迄のルールでは、2020年春までに入社する学生については、会社説明会は3月、採用面接は6月からとしていて、この理由は学生たちが学業に専念出来るように配慮した結果とされていますが、この調査で今後もこうした新卒一括採用のスケジュールが必要かどうかを聞いたところ、回答した企業78社の中で55.1%が「必要」と答えました。一方「不要」は29.5%で、「どちらでもない・わからない」は15.4%でした。

「必要」とした企業が理由として挙げたことには学業への影響を懸念する声が目立っており、例えばキリンホールディングスは「学生の学業を優先する形で、産学のルールは一定程度必要」と回答しています。また第一三共の「経団連ルールにはこだわらないが、学生の学業を守る何らかのルールは必要」といった意見の様な、経団連のルールは廃止されても目安となるスケジュールは欲しいという声もありました。

ところが、現状でも経団連“就活ルール”の6月面接解禁以前の段階、例えば5月1日時点の内定率は4割を超えているとされています。これは経団連に加盟していないIT系や外資系企業などがこの“就活ルール”に従わずとも問題がない為に、経団連加盟企業が面接選考を始める以前に既に内定/内々定を出す傾向が高いからと云います。

世界的にも、人工知能(AI)技術者や高度なプログラミング開発者などの人材争奪戦は激しくなっており、“就活ルール”を「不要」と答えたNTTデータなどは「外資などが内定を早く出しており、ルールが(実質的に)機能しておらず、人材の獲得で後れを取る」と国際競争の観点から、従来から続く我国の慣例である“就活ルール”の存在に懸念を表明していました。

 

通年採用の「実施・検討」は5割弱

特に採用時期を限定せずに行う通年採用については、回答した88社の中で47.7%が「始めている」、または「検討している」と回答し、コマツなどは「海外留学生など個別事情に応じている」と答えています。逆に「検討していない」と答えた企業も45.5%ほどあり、Yes/Noの両者はほぼ拮抗した結果でした。ちなみに「どちらでもない・わからない」は6.8%です。

また「始めている」や「検討している」とした理由については、「卒業時期の異なる海外の大学を卒業した留学生など優秀な人材を採用する為」と答えた企業が目立ち、既に2015年から通年採用を導入しているソフトバンクでは「企業・学生それぞれが、自由な時期に就職・採用活動を行うのが本来の姿と考える」と答えています。

反対に「検討していない」と回答した企業では、費用対効果や受け入れ体制の不備などを主な理由に挙げています。IHIは「採用活動のリソースがより多く必要になり、現状ではそこまで望めない」と回答しており、同様の意見の他社には、「入社時期に差異が生じた場合、新人研修などをどうするのか」などの不安がある様です。

 

東京五輪に関係した日程変更が「必要」は2割弱

2021年春入社の新卒学生の就職活動に関しては、2020年の東京五輪の開催により首都圏の主要なイベント施設が優先的に使用されてしまうことから、就職説明会や選考会場に使う場所が不足するという懸念が出ていましたが、今回の“就活ルール”廃止に対応して新たに日程的な対応を検討する必要があるかを質問したところ、回答を寄せた79社の内70.9%が「不要」と回答しており、「必要」とする17.7%を大きく上回り、そもそもこの点については各企業側も既に対策済みといった印象です。

ちなみに「不要」と答えた企業では、ローソンの様に「自社施設の使用を検討」などの理由が目立ちますが、「必要」と答えた企業からは「会場や宿泊施設の不足が予想され、前倒しの日程ルールが必要ではないか」(ライオン)等の意見が聞かれました。

 

人事/採用担当者の声

多数の新卒採用を行う大企業では、面接の解禁時期などを定めたルールがあることで効率的に多くの学生を採用できるメリットがあり、今後も何らかのルールが必要だという立場に立つ場合が多いようです。しかし経団連が示すルールに従って採用活動を実施していると、ルールにとらわれず早期に採用活動を行う一部の有力IT企業や外資系&海外企業に先を越されて有能な学生を採用されてしまうことも多く、人材獲得の競争で不利になっていると云います。

また全国展開している大手企業の採用担当者からは、「全国広範囲を対象に採用活動を行っているので、就活の時期が明確でないと採用スケジュールが立てられなくなり困惑しています」との意見があり、同様の立場の企業担当者からは、「今後の政府や関係機関などによる議論の行方を極力注視したい」との発言がありました。

ある中小企業の担当者は、「学生に勉学に励んでもらいたいので、採用の時期を早めることは考えていないが、売手市場の現状では今後の採用に影響が出てくることを懸念している」と述べ、中小企業にとって採用活動が厳しくなり一段と人材の確保が困難になるというという見通しを示しました。

また同様に中小企業経営者からは「ルールなしでノーガードで打ち合う人材争奪戦となると、今迄も大変だったのに今後はどうなるのか、大変不安です」との声を聴きました。更に「採用活動の時期に幅やズレがあるのでは、弱小企業にとっては公平な競争が出来ない。しかし新たなルールが決まるのであれば、それなりに準備期間が必要なので、とにかく早く決めてほしい」との懸念も出ています。

そして大企業・中小企業ともに採用を担当する社員からは、ルールが廃止されれば採用活動が結果として長期化し、他の人事・労務業務との兼任で採用担当者の負担が増すことが考えられ、「今後、企業の採用活動は早期化し、更に長期化していくだろう。ルールの無き戦いが始まり、年間を通して採用活動をしないといけない状況になるのではないかと大いに心配だ」との声が聞かれました。

 

採用される側の学生の声

今後、経団連“就活ルール”廃止の後の就職活動に関しての議論は、政府や経団連、諸大学が中心となって進む見通しですが、あくまで就職活動の当事者は学生たちです。

過去、紆余曲折を繰り返すルールに振り回されてきた学生たちは、経団連“就活ルール”廃止を踏まえて就活のスケジュールについてどう考えているのでしょうか。

 

ひたすら「不安」派

先ずは、とにかく「不安」の声から。「就活時期が大幅に早くなるのであれば、勉強等が全然出来なくなるから不安」、「出来るだけ早くから仕事で使える力がつく授業をとろうという方向になり、例えば「文学」等もそうですが、直接ビジネス分野とは関係が薄い分野の授業は履修しなくなるでしょう。好きな勉強が出来なくなるのでは、と不安です」など。そして「自分が採用試験を受ける頃にちょうど制度が変わるので、これからどのように活動していけばいいのか不安だ」と述べた学生は、採用活動の時期が見通せなくなると懸念していました。

 

“就活ルール”廃止に賛成派

「6月解禁のル-ルに従わない企業も多くそれ以前の時期から選考を開始しており、経団連のルールは形骸化しているように感じています。学生側としても、一年中就活が出来るような環境があった方が周囲のペースに飲まれず、腰を据えて自分にマッチした企業選びに取り組めるのではないかと思います」とか「就職活動出来る期間が長くなれば、いろいろな企業を受験出来るメリットもあるのではないか」と前向きにとらえた意見を述べる学生もいますが、この様な考えの持ち主は皆一様に就活に積極的で就職に貪欲な学生にみえました。

また条件付で賛成であるとの意見も多く、それは「ルール形骸化なら無くして欲しい」というものです。「選考に不透明な点が多く、たびたび不信感を持った。ルールを守るなら守り、形骸化しているなら無くしてほしい」との事でした。

 

“就活ルール”廃止に反対派

「今までは就活時期を避けて授業の履修スケジュールを考えていましたが、就活時期が定まっていないと、どの時期に集中して授業を履修すれば良いのか迷います。また、授業や課題、卒論をこなしながらずっと就活のことを考えなければならず、どうしても学業が疎かになってしまうのではないかと心配なので、ルールの廃止には反対です」や「他社を出し抜き早期から選考を始めて、学業に支障をきたす様な企業の動きにはいい加減うんざり」との意見も結構多くあります。

 

現在より前倒しを求める意見が84.9%

就職情報大手のディスコ(東京・文京区)が2019年卒の学生向けに本年6月に実施した調査(調査内容は、現在の企業の採用スケジュールに対する賛否や望ましいスケジュールなどについてであり、1,100人以上から回答を得たもの)では、従前の “就活ルール”が定める日程については意見が分かれていました。「賛成」が23.4%で「反対」が26.7%でした。また、どちらとも言えないが49.9%を占めていました。尚、文系、理系を男女で区分してもこの傾向は概ね変わりませんでした。

但し「望ましい企業の採用活動の開始時期」についての質問には、(現在は大学3年生の3月に解禁されている)会社説明会などの企業の採用広報活動の開始時期は、「3年生(大学院1年生)の9月以前」が望ましいとの答えが32.7%を占め、更に現在の解禁時期よりも早い2月以前を求める意見は77.9%に上りました。

面接受験から内定獲得までの具体的な選考活動の開始時期についても、現在の6月解禁に対して最も高い回答率は「3年生の3月」で27.2%となり、前倒しを求める意見が84.9%に達しました。また、いずれも理系の学生の方がスケジュールの早期化により前向きで、これは早めに就職活動を終えて、4年生の1年間は研究活動に没頭したいとの考えと思われます。

 

学生の求めるのは公平・公正で透明な就職活動の環境整備

この調査だけで全体の意向を判断する訳にはいきませんが、就活スケジュールの遅めの開始を学業を優先すべきだとの考えから後押しする大学側などとは異なり、多くの学生たちは早期化を希望しているかの様です。果たして、調査に応じた学生たちの本音はいずこにあるのでしょうか?

ディスコの担当者によると「学生の意見としてスケジュールの早期化よりも、透明な環境で早く結論を出してほしいという傾向がある」と解説しています。ある意味、人生の成功と失敗を分かつ起点となる就職という大きな課題に挑む学生たちにとって、強いストレスにさらされる就活期間は、企業や大学側の勝手な都合で作られたルールのもとではなく、公平・公正で透明な環境下であって欲しいというのが本音かも知れません‥‥。

 

まとめ ~ “就活ルール”廃止後にむけて

就活コンサルタントの業界からは“就活ルール”の廃止に賛成する意見も目立ちますが、大学関係者においては学業への影響などから就活の早期化に対する懸念が多い様です。また世界的に過熱する人材争奪戦を巡っては、我国の企業が優秀な人材を獲得出来ずに没落する事への危機感も高まっており、グローバルな経営環境にある企業関係者の中からは、新卒一括採用という枠組み自体に無理が生じてきているとの声もあります。

今回の発表を受けて、経団連が枠組みを示す今迄の“就活ルール”は廃止されますが、中小企業の採用活動や学生の学業への影響を最小限に止めるべきとの考えも強く、今後の我国の就職活動の在り方において、今迄以上に政府の果たす役割が大きなものとなるでしょう。そして今後は一定のルールを保ちつつ、企業の競争力向上にも繋がる就職活動とはどうあるべきか? と云った議論や我国の特徴である新卒一括採用の動き、そして終身雇用制度なども含めて、広く雇用問題全般に関する議論が深まりそうです。

凡そ100年続いた我国独自の新卒一括採用の流れに終止符が打たれることになるのか? またあるいは今後も何らかのルールが設けられるのか? など、引き続き政府を始め関係各位の動向に注目していく必要がありそうです!!

 

【続報】10月29日、政府は経団連 並びに大学側 双方との協議を経て、今後は国が主導する形で“就活ルール”を存続させることを決定しました。採用活動の解禁日についても、当面は従来通り3月に説明会を、6月に面接を解禁とするとしていますが、来年度以降も改めて採用日程に関して検討を行うとしています。

 

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